Part 1 ではノーテーションソフトウェア(Finale)を使い、Part 2 では DAW(Pro Tools)でのMIDIデータを編集のポイントを紹介しました。
テンポを操ることに焦点をあてつつ、いかに自然な演奏に近づけるかという視点で書きましたが、こんなに細々した作業をやるくらいなら、ピアニストに録音してもらうのが一番いいのではという結論になりました。
生演奏が良いのは当たり前だとしても、伴奏者が一人で弾くとなると相手の呼吸や、音を聞いて合わせるわけではないので、思い描くテンポとマッチするものにはならないかもしれないという心配があります。
そこで、この記事では録音してもらったピアノ伴奏音源のテンポを微調整をしたい場合について書きます。
あくまでも微調整の範囲にとどめるためには、編集ありきではなく録音してもらう前にテンポ感などの確認をしておいた方がいいです。
ではさっそく音源の聴き比べです。
1)Finale / Garritan Instruments Concert D Grand Piano
2)Pro Tools / Synthogy ivory II American Concert Grand D (Finaleと同じMIDIデータ使用)
3)生録音 / YAMAHA C3E
テンポ変化云々の前に、シンセ音源のピアノとアコースティックピアノとの違いは響きなんだと改めて感じるかと思います。
2,000万円のSTEINWAYピアノのサンプリングシンセがいくらきれいな音でも、音と音が重なった響きの広がりはアコースティックならではの良い点だなと思います。
まぁ何を良しとするかはいろんなシチュエーションがありますが、、本題へ。
Pro Toolsでオーディオデータのテンポを編集
1. 下準備
オーディオを取り込んだトラック。トラック名の横の三角押してをクリップを新規に複製します。
こうしておくことで万が一、元の状態に戻したいときはクリップをはじめのものに戻せばOKです。
タブトゥトランジェントの設定をオンにする。
するとキーボードの[tab]キーで、オーディオ波形のアタックの場所に移動できるようになります。
オーディオファイルの頭に余分な空白がある場合は、このタブトゥトランジェントをオンにしてから、オーディオ波形の上で[tab]を押します。
1音目のアタックにカーソルがいくのでクリップを分割します。(ショートカットMacは⌘ E、Control E)
2. 全体のテンポ変更
例えば全体的に少し速くしたいときの手順です。
頭の空白を切り離したオーディオファイル全体を選択します。
バーメニューのAudioSuite>Pitch Shift>Time Shiftを選びます。
右上の <デフォルト設定> をクリックし、「Piano」を選びます。
真ん中の「TIME」にあるノブでテンポ調整を行います。はじめはSPEEDが「100.00%」になっています。
まずこの状態で左下のスピーカーマークのボタンを押し聞いてみます。(再生、ストップ共にこのスピーカーボタンです)
次に、テンポを速くしたければノブを右に回し数値を100%より大きくします。
変化した音を再生します。再生しながら、右上の「比較」を押すと、元の100%の状態と聴き比べることができます。
SPEEDを115%に設定したときの音源
さすがに変更幅が大きいとオーディオの音質がこのように変わってしまうので、変にならない範囲で値を設定します。
そして変更する値が決まったら、右下の「レンダー」を押します。これでオーディをデータは書き換わりました。
他にもいくつか方法があります。
TCEモード
トリムツールを右クリックし、TCEモードに変えてオーディオをトラックをビヨよよーんと伸ばす。下記参考リンク記事内「ProToolsのタイムストレッチ設定方法」を参照。
この機能もどうやらTime Shiftのデフォルト設定を適用させているようです。視覚的にできるので簡単ですが、聴き比べたり細かい単位で微調整できないので、AudioSuiteからTime Shiftプラグインを立ち上げてやる方法が良いと思います。
エラスティックオーディオを使い、曲のテンポ設定を変更する方法
下記リンク参照。
この方法は、他にトラックがあり拍を基準に合わせないといけない場合には有効です。でも今回はピアノオーディオトラックのみなので、かえって遠回りなやり方になるためお勧めしません。
X-Form
「X-Form」というプラグイン。Pro Tools Firstには付随していませんが、もし持ってる場合はこちらの方が音質はきれいにオーディオの伸縮ができます。
3. 一部分だけのテンポ変更
エラスティックオーディオの機能を使うと、一部分のみテンポを微調整することができます。
トラック情報の青色の時計マークの横にある謎のマークを押します。
「Polyphonic」を選び、エラスティックオーディオ機能がオンになります。
そして2つ上の「波形」となっているところをクリックし「ワープ」に変更します。
そうすると、1つ1つの音のアタック位置に縦線が表示されます。
この縦線の上でダブルクリックすると、下に青三角が現れます。
青三角を左右にドラッグすると音の位置を変更できます。次の青三角までをひとまとめに伸縮される仕組みです。
画像左側の矢印のように8分音符4つをまとめて伸ばしたり、右側のように八分音符1つずつに区切って1つ1つの音価を微調整したりできます。
変更を取り消したいときはダブルクリックで青三角を消すと、波形も元に戻ります。
エラスティックオーディオをオフにするとこのオーディオ編集は反映されません。もしエラスティックオーディオで編集をした場合はこの機能をオンにしたまま音源書き出しをします。
以上、3回に渡ってピアノ伴奏音源の作り方のポイントを紹介しました。この記事がいろんな工夫をしながらオンラインレッスンをされてる先生方や、音楽、楽器を愛する方々の助けになれば幸いです。
このブログ執筆のためにせっかく録音したので、サン=サーンス「白鳥」の伴奏トラックをダウンロードできるようにしました。テンポ感が合わなければぜひ、上記の方法で編集してみてください♪
Le Cygne Piano Track
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